人は不確実なものほどハマりやすい「報酬」-バラス・スキナー

人はなぜソーシャルメディアにハマるのか。要因は色々と考えられるが、ここでは脳の報酬というコンセプトから考察する。

行動心理学の創始者バラス・スキナーは、スキナーボックスで以てネズミがどのような行動をとるのかを実験・研究した。

スキナーボックス

次の4つの条件のうち、ネズミがもっともレバーを押し下げるようになるのはどの条件下か。

  1. レバーの押し下げに関係なく、一定時間間隔でエサが出る。
  2. レバーの押し下げに関係なく、不定期間隔でエサが出る。
  3. レバーを押すと、必ずエサが出る。
  4. レバーを押すと、不確実にエサが出る。

実験結果としては、4→3→2→1の順で減少することがわかっている。

行為の強化

先の結果について特に注意したいのが、3よりも4の方が、どうもネズミは動機付けされているらしい、という点だ。

必ずエサが出るよりも、不確実にエサが出る方が、ネズミがレバーを押し下げする回数が多い。この結果は、私たちが考える報酬のあるべき姿からすると、かなり違和感のあるものではないだろうか。

これは所謂、行為の強化に関する実験だが、行為は、その行為による報酬が必ず与えられるとわかっているときよりも、不確実に与えられるときの方がより効果的に強化される、ということだ。

社会の様々な側面に応用されている

スキナーボックスの条件をスケジュールに変換してみる。

  1. 固定間隔スケジュール
  2. 変動間隔スケジュール
  3. 固定比率スケジュール
  4. 変動比率スケジュール

4の変動比率スケジュールは、社会の様々な面で垣間見ることができる。

不確実なものほどハマりやすい

わかりやすいのがギャンブル。日本のパチンコやラスベガスのスロットマシンは、確率を変動させながら報酬を与える仕組みになっている。

2012年に消費者庁が景品表示法で禁止しているカード合わせに該当する、と正式見解を表明したコンプガチャも、変動比率スケジュールによってレアなガチャがでる、という仕組みになっている。

こうした領域で様々なサービスを展開している人たちの、人間性に関する洞察の鋭さには旋律させられる。

ソーシャルメディアによる報酬

最後に、ソーシャルメディアが人に与える報酬についても記載しておく。ソーシャルメディアが人にもたらす報酬はドーパミンだ。

スマホを手に持ちフェイスブックやX(旧ツイッター)ばかり見ている。なんらかの受信通知があると中身を確認せずにはいられない。こういった行為はドーパミンのなせる業だと考えられている。

ドーパミンとオピオイド

長い間、ドーパミンは快楽物質であると考えられてきた。しかし最近の研究では、ドーパミンの効果は快楽を感じさせることよりも、何かを求めたり、欲したり、探させたりすることであることがわかってきている。

その対象は食べ物、異性などの物質的欲求だけではなく、抽象的な概念、つまり素晴らしいアイディアや新しい知見といったものも含まれる。

快楽に関与しているのはドーパミンよりもオピオイドであることがわかってきている。欲求系ドーパミンと快楽系オピオイドは、相補的に働く。つまりは人をコントロールするエンジンとブレーキのような役割である。

欲求系>快楽系

一般に、欲求系は快楽系よりも強く働く。多くの人は常になんらかの欲求を感じて追及行動に駆り立てられる、ということだ。

ドーパミンは、予測できない出来事に直面したときに刺激される。つまり、スキナーボックスの4、変動比率スケジュールが該当する。

ソーシャルメディアの内容は予測ができない。変動比率スケジュールで動いているため、人の行動を強化する効果が非常に強い。なぜソーシャルメディアにハマるのか。それは予測不可能だから、というのが近年の学習理論の知見がもたらしてくれる答えだ。

バラス・スキナー

バラス・スキナー(Burrhus Frederic Skinner、1904年3月20日 – 1990年8月18日)は、アメリカの心理学者であり、行動主義の代表的な研究者の一人です。彼の業績は行動主義心理学や教育学、そして社会学において広く評価されています。

操作的条件づけ: スキナーは、「操作的条件づけ」と呼ばれる学習の理論を提唱しました。彼は、行動が環境との相互作用によって形成され、特定の刺激と反応の間に連続性があると考えました。この理論は、行動が報酬や罰などの結果によって強化されるという考え方に基づいています。

スキナーボックス: スキナーは、動物の行動を実験的に研究するための装置である「スキナーボックス」を開発しました。この装置は、動物が特定の行動を行ったときに報酬を受け取るように設計されており、動物の学習や行動のメカニズムを研究するために広く使用されました。

プログラムされた学習: スキナーは、プログラムされた学習(Programmed Learning)と呼ばれる教育法を提唱しました。これは、学習者が自分のペースで学習することができるように、情報が段階的に提示される教育方法です。

人間の自由意志の否定: スキナーは、人間の行動は環境によって強く制御されており、自由意志や内的な要因の影響は過大評価されていると主張しました。彼は自由意志の概念を否定し、「人間は自由ではなく、環境によって形成される」という見解を持っていました。

バラス・スキナーの業績は、行動主義心理学の発展に大きく貢献し、彼の理論や研究は教育、臨床心理学、そして社会学などの分野にも影響を与えています。

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