ロックは哲学者としてだけではなく、医者としても多くの乳児や幼児と接する経験を得た。
そのことから、生まれたときの人の心は「何も書かれていない石板=タブラ・ラサ」のようなものだと説いた。
タブラとはタブレットの語源、つまりは板という意味を含む。ロックが到達した「何も書かれていない石板=タブラ・ラサ」の見地について。
教育によって人間ができあがる
物事に対する人の考え、つまり現実世界についての理解は、感覚を通して得られた経験により直接的に導かれるか、あるいは間接的に経験から導き出された要素が元になる。
生まれたとき、誰の心も白紙ということであれば、人間には生まれついての優劣はない、ということになる。
王族や貴族の出自であろうと、職人や農民のせがれであろうと、生まれついての優劣はない。個人の素養は全て、生まれた後にどのような経験をするかによって決まる。
フランスにおける大衆隷属の解放
当たり前のようにも聞こえるロックの考え方は、当時の時代、特にフランスにおいては画期的であった。
大衆も教育を受けることによって社会的な隷属状態から解放され、すべての人が平等な立場に立てる、という信念の形成へと繋がった。
現代への命題
人は経験と学習によっていくらでも学ぶことができる、というのが命題だとすれば、これは人生のどの時点においても適用し得る。
人生100年時代と言われる現代において、学び直しの観点も重要な論点となる。テクノロジーの進歩が著しい現代であれば、学んだ知識がすぐに陳腐化してしまう傾向にある。
過去に固執することなく、一度頭をリセットして、頭を何も書かれていない石板=タブラ・ラサの状態に戻し、有意義な知識を書き入れることができるか。
ロックが否定した人物とその考え方
哲学者が何を言おうとしているのかをより正確に理解しようとする場合、何を肯定しようとしているのかよりも、何を否定しているかの方が重要である。この考え方は哲学者に限ったことではない。
デカルト
世界についての理解は、経験に頼らずとも正確に認識することは可能だ、とデカルトは説いた。
プラトン
人は生まれながらにして、前世で得た知識を有している、とプラトンは説いた。
ジョン・ロック
ジョン・ロック(John Locke、1632年8月29日 – 1704年10月28日)は、17世紀のイギリスの哲学者、政治思想家、医師です。彼は近代リベラリズムの先駆者として知られ、人間の自然権や政府の正当性に関する理論で広く知られています。
ロックの主な思想と業績は以下の通りです。
経験論: ロックは経験論の立場を取り、人間の知識や理解は経験から得られると主張しました。彼は「空白の精神(tabula rasa)」の概念を提唱し、人間の心は生まれながらにして何も書き込まれていない状態であり、経験によってのみ知識や理解が形成されると主張しました。
自然権論: ロックは、人間は生まれながらにして自由で平等な存在であり、生命、自由、財産を保護する自然権を持っていると主張しました。彼の自然権論は後のアメリカ独立宣言やフランス人権宣言などにも影響を与えました。
社会契約論: ロックは、政府の正当性は人々の自然権を保護するために設立され、統治の合意または社会契約に基づいていると主張しました。彼は人々が政府に統治されることを自発的に同意するという考え方を提唱しました。
政治思想: ロックの政治思想は、絶対君主制に対する批判や議会制民主主義の提唱など、多岐にわたります。彼は政府の役割を、人々の自然権を保護し、平和と秩序を維持することにあると考えました。

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