人を動かす3つの十分条件「ロゴス」「エトス」「パトス」-アリストテレス

人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、「説得より納得、納得より共感」が求められる。

では、人が真に動くためには何が必要なのか。アリストテレスは「弁論術」において、「ロゴス」「エトス」「パトス」が必要だと説いた。

如何に論理的と言えども、それだけでは人は中々動かない。言っていることはわかった、だからと言って行動に移すかどうかは別、という状況は自他ともに経験したことがあるであろう。

ロゴス-ロジック(論理)

論理だけで人を動かすことは難しいが、一方で論理的に破綻している企てに、人の賛同を得ることは難しい。主張が理にかなっている=論理的というのは、人を説得するうえで非常に重要な要件である。

アリストテレスも、「弁論術」においてロゴスの説明に多くのスペースを割いている。

しかし、論理的であるというだけでは、人は動かない。つまり、論理的であるというのは、必要条件であって十分条件ではない、ということである。

エトス-エシックス(倫理)

ロゴスの次に挙がるのが倫理で、如何に論理的と言えども、道徳的に正しい=倫理的と思える事柄でなければ、人のエネルギーを生み出すことはできない。

人は、道徳的に正しいと思えること、社会的に価値のあることに、時間と労力を割きたいと考える生き物である。であるからこそ、そうした点を訴えて人の心を動かすことが有効であると、アリストテレスは説いている。

パトス-パッション(情熱)

論理的で倫理的な主張であっても、その主張者が冷淡に唱えている様子に対し、人は共感という感情を抱くほど単純な思考を持ち合わせてはいない。

主張者が、情熱を持って語ることで、そこに共感が生まれる。

黒人の人種差別撤廃を訴えたキング牧師、維新の重要性を明治という時代に説いた坂本龍馬、共に働く人々からは嫌われながらも世間からは絶賛されたスティーブ・ジョブズ。歴史を動かした人物は皆、情熱を持っていたことが容易に想像できる。

アリストテレス

アリストテレス(Aristotle、384年頃 – 322年頃)は、古代ギリシャの哲学者、科学者、および学者であり、西洋哲学の中でも最も重要な人物の一人です。彼は、プラトンの弟子として知られるソクラテスの弟子であり、アレクサンドロス大王の教育係でもありました。

アリストテレスは、哲学の多くの分野において重要な業績を残しました。彼の思想は、形而上学、倫理学、政治哲学、物理学、天文学、生物学、論理学などに及びます。その著作は広範囲にわたり、多くの分野に影響を与えました。

彼の最も重要な業績の一つは、形而上学における「アリストテレス的実在論」の確立です。彼は、「存在するものはすべて何らかの目的を持っている」という考え方を提唱し、この目的論は彼の思想の中心的なテーマの一つとなりました。

また、アリストテレスは、倫理学においても重要な貢献をしました。彼は「ニコマコス倫理学」や「大徳性倫理学」などの著作で、幸福の最終目的や徳性、倫理的行為の本質などについて議論しました。

さらに、アリストテレスは自然科学においても重要な役割を果たしました。彼は生物学の基礎を築き、「生物学の父」とも呼ばれます。また、彼の著作「動物学」や「植物学」では、生物の分類や構造、生命の起源などについて記述しています。

アリストテレスの業績は、その後の西洋哲学や科学の発展に多大な影響を与えました。彼の思想は中世のキリスト教哲学やイスラーム哲学にも受容され、ルネサンス期のヨーロッパにおいても再評価されました。

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